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リン酸アンモニウム

更新日：
リン酸アンモニウムの化学構造式

リン酸アンモニウム（Ammonium phosphate）は，化学式 (NH4)3PO4 で表される無機化合物です。

目次
  1. 1名称
  2. 2化学式と構造
  3. 3物質情報
  4. 4構成要素
  5. 5熱力学的性質
  6. 6溶解度
  7. 7製法
  8. 8化学反応
  9. 9参考文献
  10. 10関連物質
  11. 11関連カテゴリ
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名称

物質名称一覧

命名法
Nomenclature
名称
Name
代表的名称
Typical name
リン酸アンモニウム
Ammonium phosphate
組成命名法
Compositional nomenclature
リン酸アンモニウム
Ammonium phosphate
リン酸三アンモニウム
Triammonium phosphate
置換命名法
Substitutive nomenclature
リン酸アザニウム
Azanium phosphate
リン酸三アザニウム
Triazanium phosphate
付加命名法
Additive nomenclature
テトラオキシドリン酸(3−)テトラヒドリド窒素(1+)
Tetrahydridonitrogen(1+) tetraoxidophosphate(3−)

化学式と構造

化学式一覧

化学式名称
Formula name
化学式
Formula
代表的化学式
Typical formula
(NH4)3PO4
組成式
Compositional formula
(NH4)3PO4
構造式
Structural formula
リン酸アンモニウムの化学構造式
その他の構造式
Other structural formulas
リン酸アンモニウムの化学構造式 (二重結合表記)
電子式 (ルイス構造式)
Lewis structure
リン酸アンモニウムの電子式 (ルイス構造式)
電子式 (ルイス構造式, 色付き)
Colored Lewis structure
リン酸アンモニウムの電子式 (ルイス構造式, 色付き)

物質情報

物質情報一覧

項目
Item
値
Value
名称
Name
リン酸アンモニウム
Ammonium phosphate
化学式
Formula
(NH4)3PO4
外観
Appearance
無色の固体
Colorless solid
臭気
Odor
無臭
Odorless
モル質量
Molar mass
149.087 g/mol
密度
Density
–
融点
Melting point
分解
→ (NH4)2HPO4, NH3
沸点
Boiling point
–

構成要素

構成イオン

イオン
Ion
名称
Name
電荷数
Charge number
個数
Number
NH4+アンモニウムイオン13
PO43−リン酸イオン-31

構成原子

原子
Atom
名称
Name
酸化数
Oxidation state
個数
Number
N窒素−33
H水素+112
Pリン+51
O酸素−24

原子の比率

原子
Atom
原子量
Atomic weight
個数
Number
原子比率
Atomic ratio
重量比率
Weight ratio
N14.007315.00%28.19%
H1.0081260.00%8.11%
P30.97415.00%20.78%
O15.999420.00%42.93%
NHPO原子比率
NHPO重量比率

熱力学的性質

相転移特性

項目
Item
値
Value
融解熱
Enthalpy of fusion
–
蒸発熱
Enthalpy of vaporization
–
蒸発熱 (25°C)
Enthalpy of vaporization at 25°C
–
その他転移エンタルピー
Enthalpy of other transition
–

標準熱力学特性

状態
State
標準生成
エンタルピー
ΔfH°
kJ · mol−1		標準生成
ギブス
エネルギー
ΔfG°
kJ · mol−1		標準モル
エントロピー
S°
J · K−1 · mol−1		標準モル
定圧熱容量
Cp°
J · K−1 · mol−1
結晶性固体−1671.9[1]–––
水溶液 (解離状態)−1674.9[1]−1256.6[1]117.[1]–
結晶性固体
3水和物
−2555.6[1]–––

溶解度

溶解性

反応
Reactive
混和
Miscible
易溶
Very soluble
可溶
Soluble
H2O水
微溶
Slightly soluble
難溶
Very slightly soluble
不溶
Insoluble
CH3COCH3[2]アセトン

水への溶解度 (g/100 g, 三水和物)[2]

25°C
25

溶解度曲線 (g/100 g)

0°C20°C40°C60°C80°C100°C温度 (°C)051015202530溶解度 (g/100 g)

製法

酸と塩基の反応

リン酸とアンモニアが反応すると，リン酸アンモニウムが生成します。

リン酸とアンモニアの反応
◆
ΔrG−34.6 kJ/mol
K1.15 × 106
pK−6.06
H3PO4リン酸 + 3NH3アンモニア
⟶
(NH4)3PO4リン酸アンモニウム

塩基と酸性酸化物，水の反応

アンモニアと十酸化四リン，水が反応すると，リン酸アンモニウムが生成します。

アンモニアと十酸化四リン，水の反応
◆
ΔrG−587.9 kJ/mol
K9.90 × 10102
pK−103.00
12NH3アンモニア + P4O10十酸化四リン + 6H2O水
⟶
4(NH4)3PO4リン酸アンモニウム

非金属と塩基，水の反応

リンとアンモニア，水が反応すると，リン酸アンモニウムとホスフィンが生成します。

リンとアンモニア，水の反応
◆
ΔrG−618.8 kJ/mol
K2.56 × 10108
pK−108.41
8Pリン + 9NH3アンモニア + 12H2O水
⟶
3(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 5PH3ホスフィン

化学反応

電離反応

リン酸アンモニウムが電離すると，アンモニウムイオンとリン酸イオンが生成します。

リン酸アンモニウムの電離
(NH4)3PO4リン酸アンモニウム
⟶
3NH4+アンモニウムイオン + PO43−リン酸イオン

強酸との反応

リン酸アンモニウムと強酸が反応すると，強酸の塩とリン酸が生成します。

リン酸アンモニウムと塩化水素の反応
◆
ΔrG−123.8 kJ/mol
K4.88 × 1021
pK−21.69
(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 3HCl塩化水素
⟶
3NH4Cl塩化アンモニウム + H3PO4リン酸
リン酸アンモニウムと臭化水素の反応
◆
ΔrG−123.8 kJ/mol
K4.88 × 1021
pK−21.69
(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 3HBr臭化水素
⟶
3NH4Br臭化アンモニウム + H3PO4リン酸
リン酸アンモニウムとヨウ化水素の反応
◆
ΔrG−123.9 kJ/mol
K5.09 × 1021
pK−21.71
(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 3HIヨウ化水素
⟶
3NH4Iヨウ化アンモニウム + H3PO4リン酸
リン酸アンモニウムと硝酸の反応
◆
ΔrG−123.9 kJ/mol
K5.09 × 1021
pK−21.71
(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 3HNO3硝酸
⟶
3NH4NO3硝酸アンモニウム + H3PO4リン酸
リン酸アンモニウムと過塩素酸の反応
◆
ΔrG−123.9 kJ/mol
K5.09 × 1021
pK−21.71
(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 3HClO4過塩素酸
⟶
3NH4ClO4過塩素酸アンモニウム + H3PO4リン酸

強塩基との反応

リン酸アンモニウムと強塩基が反応すると，強塩基の塩とアンモニア，水が生成します。

リン酸アンモニウムと水酸化ナトリウムの反応
◆
ΔrG−51.2 kJ/mol
K9.33 × 108
pK−8.97
(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 3NaOH水酸化ナトリウム
⟶
Na3PO4リン酸ナトリウム + 3NH3↑アンモニア + 3H2O水
リン酸アンモニウムと水酸化マグネシウムの反応
◆
ΔrG−46.4 kJ/mol
K1.35 × 108
pK−8.13
2(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 3Mg(OH)2水酸化マグネシウム
⟶
Mg3(PO4)2リン酸マグネシウム + 6NH3↑アンモニア + 6H2O水
リン酸アンモニウムと水酸化カリウムの反応
◆
ΔrG−51.3 kJ/mol
K9.71 × 108
pK−8.99
(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 3KOH水酸化カリウム
⟶
K3PO4リン酸カリウム + 3NH3↑アンモニア + 3H2O水
リン酸アンモニウムと水酸化カルシウムの反応
◆
ΔrG−197.5 kJ/mol
K3.99 × 1034
pK−34.60
2(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 3Ca(OH)2水酸化カルシウム
⟶
Ca3(PO4)2リン酸カルシウム + 6NH3↑アンモニア + 6H2O水
リン酸アンモニウムと水酸化ナトリウムの反応
◆
ΔrG−41.7 kJ/mol
K2.02 × 107
pK−7.31
(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 2NaOH水酸化ナトリウム
⟶
Na2HPO4リン酸水素ナトリウム + 3NH3↑アンモニア + 2H2O水

不揮発性の塩基との反応

リン酸アンモニウムと不揮発性の塩基が反応すると，不揮発性の塩基の塩とアンモニア，水が生成します。

リン酸アンモニウムと水酸化アルミニウムの反応
◆
ΔrG184 kJ/mol
K0.58 × 10−32
pK32.24
(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + Al(OH)3水酸化アルミニウム
🔥
⟶
AlPO4リン酸アルミニウム + 3NH3↑アンモニア + 3H2O水
リン酸アンモニウムと水酸化マンガン(II)の反応
2(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 3Mn(OH)2水酸化マンガン(II)
🔥
⟶
Mn3(PO4)2リン酸マンガン(II) + 6NH3↑アンモニア + 6H2O水
リン酸アンモニウムと水酸化鉄(II)の反応
2(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 3Fe(OH)2水酸化鉄(II)
🔥
⟶
Fe3(PO4)2リン酸鉄(II) + 6NH3↑アンモニア + 6H2O水
リン酸アンモニウムと水酸化鉄(III)の反応
(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + Fe(OH)3水酸化鉄(III)
🔥
⟶
FePO4リン酸鉄(III) + 3NH3↑アンモニア + 3H2O水
リン酸アンモニウムと水酸化銅(II)の反応
◆
ΔrG−312.5 kJ/mol
K5.59 × 1054
pK−54.75
2(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 3Cu(OH)2水酸化銅(II)
🔥
⟶
Cu3(PO4)2リン酸銅(II) + 6NH3↑アンモニア + 6H2O水

酸化性化学種との反応

リン酸アンモニウムと酸化性化学種が反応すると，種々の生成物が生成します。

リン酸アンモニウムと酸素の反応
◆
ΔrG−3540.8 kJ/mol
K2.10 × 10620
pK−620.32
4(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 21O2酸素
⟶
12NO2二酸化窒素 + 4H3PO4リン酸 + 18H2O水
リン酸アンモニウムと硝酸の反応
◆
ΔrG−297.2 kJ/mol
K1.17 × 1052
pK−52.07
(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 5HNO3硝酸
⟶
8NO↑一酸化窒素 + H3PO4リン酸 + 7H2O水
リン酸アンモニウムと酸素の反応
◆
ΔrG−3019.5 kJ/mol
K9.85 × 10528
pK−528.99
4(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 15O2酸素
⟶
12NO一酸化窒素 + 4H3PO4リン酸 + 18H2O水
リン酸アンモニウムと硝酸の反応
◆
ΔrG−662.4 kJ/mol
K1.12 × 10116
pK−116.05
(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 3HNO3硝酸
⟶
3N2O↑一酸化二窒素 + H3PO4リン酸 + 6H2O水

還元性化学種との反応

還元性化学種とリン酸アンモニウムが反応すると，種々の生成物が生成します。

ナトリウムとリン酸アンモニウムの反応
◆
ΔrG−1194.5 kJ/mol
K1.85 × 10209
pK−209.27
6Naナトリウム + 2(NH4)3PO4リン酸アンモニウム
⟶
2Na3PO4リン酸ナトリウム + 6NH3↑アンモニア + 3H2↑水素
ナトリウムとリン酸アンモニウムの反応
◆
ΔrG−281.2 kJ/mol
K1.84 × 1049
pK−49.26
8Naナトリウム + (NH4)3PO4リン酸アンモニウム
⟶
4Na2O酸化ナトリウム + PH3↑ホスフィン + 3NH3↑アンモニア

沈殿反応

水溶液中に特定の化学種が存在すると，リン酸アンモニウムと反応して沈殿が生成します。

塩化マグネシウムとリン酸アンモニウムの反応
◆
ΔrG−137.3 kJ/mol
K1.13 × 1024
pK−24.05
3MgCl2塩化マグネシウム + 2(NH4)3PO4リン酸アンモニウム
💧
⟶
Mg3(PO4)2↓リン酸マグネシウム + 6NH4Cl塩化アンモニウム
臭化マグネシウムとリン酸アンモニウムの反応
◆
ΔrG−137.0 kJ/mol
K1.00 × 1024
pK−24.00
3MgBr2臭化マグネシウム + 2(NH4)3PO4リン酸アンモニウム
💧
⟶
Mg3(PO4)2↓リン酸マグネシウム + 6NH4Br臭化アンモニウム
ヨウ化マグネシウムとリン酸アンモニウムの反応
◆
ΔrG−136.5 kJ/mol
K8.20 × 1023
pK−23.91
3MgI2ヨウ化マグネシウム + 2(NH4)3PO4リン酸アンモニウム
💧
⟶
Mg3(PO4)2↓リン酸マグネシウム + 6NH4Iヨウ化アンモニウム
硝酸マグネシウムとリン酸アンモニウムの反応
◆
ΔrG−137.0 kJ/mol
K1.00 × 1024
pK−24.00
3Mg(NO3)2硝酸マグネシウム + 2(NH4)3PO4リン酸アンモニウム
💧
⟶
Mg3(PO4)2↓リン酸マグネシウム + 6NH4NO3硝酸アンモニウム
硝酸アルミニウムとリン酸アンモニウムの反応
◆
ΔrG−113 kJ/mol
K6.26 × 1019
pK−19.80
Al(NO3)3硝酸アルミニウム + (NH4)3PO4リン酸アンモニウム
💧
⟶
AlPO4↓リン酸アルミニウム + 3NH4NO3硝酸アンモニウム

分解反応

リン酸アンモニウムが分解すると，種々の生成物が生成します。

リン酸アンモニウムの分解
◆
ΔrG64.7 kJ/mol
K0.46 × 10−11
pK11.33
(NH4)3PO4リン酸アンモニウム
🔥
⟶
3NH3↑アンモニア + H3PO4リン酸
リン酸アンモニウムの分解
◆
ΔrG708.5 kJ/mol
K0.75 × 10−124
pK124.12
4(NH4)3PO4リン酸アンモニウム
🔥
⟶
12NH3↑アンモニア + P4O10十酸化四リン + 6H2O水
リン酸アンモニウムの分解
◆
ΔrG612.4 kJ/mol
K0.52 × 10−107
pK107.29
2(NH4)3PO4リン酸アンモニウム
🔥
⟶
3N2H4ヒドラジン + 2H3PO4リン酸 + 3H2↑水素
リン酸アンモニウムの分解
4(NH4)3PO4リン酸アンモニウム
🔥
⟶
12NH2OHヒドロキシルアミン + 3PH3↑ホスフィン + H3PO4リン酸

水溶液の電気分解

リン酸アンモニウム水溶液を電気分解すると，種々の生成物が生成します。

リン酸アンモニウム水溶液の電気分解 (水≠反応物)
◆
ΔrG612.4 kJ/mol
K0.52 × 10−107
pK107.29
2(NH4)3PO4リン酸アンモニウム
💧⚡
⟶
3N2H4ヒドラジン + 2H3PO4リン酸 + 3H2↑水素
リン酸アンモニウム水溶液の電気分解 (水=酸化剤)
◆
ΔrG3381.5 kJ/mol
K0.39 × 10−592
pK592.41
2(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 12H2O水
💧⚡
⟶
6NO2↑二酸化窒素 + 2H3PO4リン酸 + 21H2↑水素
リン酸アンモニウム水溶液の電気分解 (水=酸化剤)
◆
ΔrG2170.2 kJ/mol
K0.63 × 10−380
pK380.20
2(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 6H2O水
💧⚡
⟶
6NO↑一酸化窒素 + 2H3PO4リン酸 + 15H2↑水素
リン酸アンモニウム水溶液の電気分解 (水=非酸化還元剤)
(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 3H2O水
💧⚡
⟶
3NH2OHヒドロキシルアミン + H3PO4リン酸 + 3H2↑水素
リン酸アンモニウム水溶液の電気分解 (水=非酸化還元剤)
◆
ΔrG1592.5 kJ/mol
K0.10 × 10−278
pK278.99
(NH4)3PO4リン酸アンモニウム + 2H2O水
💧⚡
⟶
3HNO2亜硝酸 + PH3↑ホスフィン + 5H2↑水素

参考文献

参考文献一覧

  1. 1
    Janiel J. Reed (1989)
    The NBS Tables of Chemical Thermodynamic Properties: Selected Values for Inorganic and C1 and C2 Organic Substances in SI Units
    National Institute of Standards and Technology (NIST)
    • 2
      John R. Rumble Jr, David R. Lide, Thomas J. Bruno (2019)
      CRC Handbook of Chemistry and Physics 100th Edition
      CRC Press
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