ホーム
化学物質
シアン化銅(I)

シアン化銅(I)

更新日：2023/3/19

シアン化銅(I)（Copper(I) cyanide）は，化学式 CuCN で表される無機化合物です。

名称

物質名称一覧

命名法

Nomenclature

名称

Name

代表的名称
Typical name: シアン化銅(I); Copper(I) cyanide

組成命名法
Compositional nomenclature: シアン化銅(I); Copper(I) cyanide

置換命名法
Substitutive nomenclature: メチリジンアザニド銅(I); Copper(I) methylidyneazanide; ニトリドメタニド銅(I); Copper(I) nitridomethanide

付加命名法
Additive nomenclature: ニトリド炭酸(1−)銅(I); Copper(I) nitridocarbonate(1−)

別名
Other names: シアン化第一銅; Cuprous cyanide; 青酸銅(I); 青酸第一銅

化学式と構造

化学式一覧

化学式名称

Formula name

化学式

Formula

代表的化学式
Typical formula: CuCN

組成式
Compositional formula: CuCN

構造式
Structural formula

電子式 (ルイス構造式)
Lewis structure

電子式 (ルイス構造式, 色付き)
Colored Lewis structure

物質情報

物質情報一覧

項目

Item

値

Value

名称
Name: シアン化銅(I); Copper(I) cyanide

化学式
Formula: CuCN

外観
Appearance: 無色の固体; Colorless solid

臭気
Odor: 無臭; Odorless

モル質量
Molar mass: 89.564 g/mol

密度
Density: 2.92 g/cm³^[1]
固体

融点
Melting point: 473 °C^[1]

沸点
Boiling point: –

構成要素

構成イオン

イオン Ion	名称 Name	電荷数 Charge number	個数 Number
Cu⁺	銅(I)イオン	1	1
CN⁻	シアン化物イオン	-1	1

構成原子

原子 Atom	名称 Name	酸化数 Oxidation state	個数 Number
Cu	銅	+1	1
C	炭素	+2	1
N	窒素	−3	1

原子の比率

原子 Atom	原子量 Atomic weight	個数 Number	原子比率 Atomic ratio	重量比率 Weight ratio
Cu	63.546	1	33.33%	70.95%
C	12.011	1	33.33%	13.41%
N	14.007	1	33.33%	15.64%

熱力学的性質

相転移特性

項目

Item

値

Value

融解熱
Enthalpy of fusion: –

蒸発熱
Enthalpy of vaporization: 12 kJ · mol⁻¹^[1]

蒸発熱 (25°C)
Enthalpy of vaporization at 25°C: –

その他転移エンタルピー
Enthalpy of other transition: –

標準熱力学特性

状態 State	標準生成エンタルピー Δ_fH° kJ · mol⁻¹	標準生成ギブスエネルギー Δ_fG° kJ · mol⁻¹	標準モルエントロピー S° J · K⁻¹ · mol⁻¹	標準モル定圧熱容量 C_p° J · K⁻¹ · mol⁻¹
結晶性固体	96.2^[2]	111.3^[2]	84.5^[2]	–

溶解度

溶解性

反応 Reactive: HCl (aq)^[1]塩酸 + 🔥

混和 Miscible

易溶 Very soluble

可溶 Soluble: NH₃ (aq)^[1]アンモニア溶液
KCN (aq)^[1]シアン化カリウム溶液

微溶 Slightly soluble

難溶 Very slightly soluble

不溶 Insoluble: H₂O^[1]水

危険有害性

GHSラベル^[3]

項目

Item

値

Value

危険有害性絵表示
Hazard pictograms: GHS07: 感嘆符; GHS08: 健康有害性; GHS09: 環境

注意喚起語
Signal word: 危険

危険有害性情報
Hazard statements: H302: 飲み込むと有害; H315: 皮膚刺激性; H319: 重篤な眼刺激性; H317: アレルギー性皮膚反応のおそれ; H372: 長期, または反復ばく露による臓器への傷害; H372: 長期, または反復ばく露による中枢神経系への傷害; H372: 長期, または反復ばく露による呼吸器系への傷害; H372: 長期, または反復ばく露による血液系への傷害; H373: 長期, または反復ばく露による臓器への傷害のおそれ; H373: 長期, または反復ばく露による肝臓への傷害のおそれ; H400: 水生生物に猛毒; H410: 長期持続的影響を伴い, 水生生物に猛毒

物理的危険性^[3]

分類	区分	表示	危険有害性情報
爆発物	分類対象外
引火性気体	分類対象外
エアゾール	分類対象外
酸化性気体	分類対象外
高圧ガス	分類対象外
引火性液体	分類対象外
引火性固体	区分外
自己反応性化学品	分類対象外
自然発火性液体	分類対象外
自然発火性固体	区分外
自己発熱性化学品	区分外
水反応引火性化学品	区分外
酸化性液体	分類対象外
酸化性固体	分類対象外
有機過酸化物	分類対象外
金属腐食性物質	分類不可 (データ不足)
鈍性化爆発物	データなし

健康有害性^[3]

分類	区分	表示	危険有害性情報
急性経口毒性	区分4	警告	H302: 飲み込むと有害
急性経皮毒性	分類不可 (データ不足)
急性吸入毒性 (気体)	分類対象外
急性吸入毒性 (蒸気)	分類対象外
急性吸入毒性 (粉塵・ミスト)	分類不可 (データ不足)
皮膚腐食性/刺激性	区分2	警告	H315: 皮膚刺激性
重篤な眼損傷性/眼刺激性	区分2	警告	H319: 重篤な眼刺激性
呼吸器感作性	分類不可 (データ不足)
皮膚感作性	区分1	警告	H317: アレルギー性皮膚反応のおそれ
生殖細胞変異原性	分類不可 (データ不足)
発がん性	分類不可 (データ不足)
生殖毒性	分類不可 (データ不足)
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)	分類不可 (データ不足)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)	区分1 (中枢神経系, 呼吸器系, 血液系)	危険	H372: 長期, または反復ばく露による臓器への傷害 H372: 長期, または反復ばく露による中枢神経系への傷害 H372: 長期, または反復ばく露による呼吸器系への傷害 H372: 長期, または反復ばく露による血液系への傷害
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)	区分2 (肝臓)	警告	H373: 長期, または反復ばく露による臓器への傷害のおそれ H373: 長期, または反復ばく露による肝臓への傷害のおそれ
誤えん有害性	分類不可 (データ不足)

環境有害性^[3]

分類	区分	表示	危険有害性情報
水生環境有害性 (短期)	区分1	警告	H400: 水生生物に猛毒
水生環境有害性 (長期)	区分1	警告	H410: 長期持続的影響を伴い, 水生生物に猛毒
オゾン層への有害性	分類不可 (データ不足)

製法

酸と塩基の反応

シアン化水素と水酸化銅(I)が反応すると，シアン化銅(I)と水が生成します。

シアン化水素と水酸化銅(I)の反応: HCNシアン化水素 + CuOH水酸化銅(I)
⟶
CuCNシアン化銅(I) + H₂O水

塩基性酸化物と酸の反応

酸化銅(I)とシアン化水素が反応すると，シアン化銅(I)と水が生成します。

酸化銅(I)とシアン化水素の反応 ◆ Δ_rG −118.5 kJ/mol K 5.76 × 10²⁰ pK −20.76: Cu₂O酸化銅(I) + 2HCNシアン化水素
⟶
2CuCNシアン化銅(I) + H₂O水

電離反応

多原子イオンが電離すると，シアン化銅(I)が生成する場合があります。

ジシアニド銅(I)酸イオンの電離: [Cu(CN)₂]⁻ジシアニド銅(I)酸イオン
⟶
CuCNシアン化銅(I) + CN⁻シアン化物イオン

テトラシアニド銅(I)酸イオンの電離: [Cu(CN)₄]³⁻テトラシアニド銅(I)酸イオン
⟶
CuCNシアン化銅(I) + 3CN⁻シアン化物イオン

化学反応

電離反応

シアン化銅(I)が電離すると，銅(I)イオンとシアン化物イオンが生成します。

シアン化銅(I)の電離 ◆ Δ_rG 111.1 kJ/mol K 0.34 × 10⁻¹⁹ pK 19.46: CuCNシアン化銅(I)
⟶
Cu⁺銅(I)イオン + CN⁻シアン化物イオン

強酸との反応

シアン化銅(I)と強酸が反応すると，強酸の塩とシアン化水素が生成します。

シアン化銅(I)と塩化水素の反応 ◆ Δ_rG −10.9 kJ/mol K 8.12 × 10¹ pK −1.91: CuCNシアン化銅(I) + HCl塩化水素
⟶
CuCl塩化銅(I) + HCNシアン化水素

シアン化銅(I)と臭化水素の反応 ◆ Δ_rG −33.7 kJ/mol K 8.02 × 10⁵ pK −5.90: CuCNシアン化銅(I) + HBr臭化水素
⟶
CuBr臭化銅(I) + HCNシアン化水素

シアン化銅(I)とヨウ化水素の反応 ◆ Δ_rG −57.5 kJ/mol K 1.18 × 10¹⁰ pK −10.07: CuCNシアン化銅(I) + HIヨウ化水素
⟶
CuIヨウ化銅(I) + HCNシアン化水素

シアン化銅(I)とヘキサクロリド白金(IV)酸の反応: 2CuCNシアン化銅(I) + H₂[PtCl₆]ヘキサクロリド白金(IV)酸
⟶
2CuCl塩化銅(I) + PtCl₄塩化白金(IV) + 2HCNシアン化水素

シアン化銅(I)とテトラクロリド金(III)酸の反応: CuCNシアン化銅(I) + H[AuCl₄]テトラクロリド金(III)酸
⟶
CuCl塩化銅(I) + AuCl₃塩化金(III) + HCNシアン化水素

強塩基との反応

シアン化銅(I)と強塩基が反応すると，強塩基の塩と水酸化銅(I)が生成します。

シアン化銅(I)と水酸化ナトリウムの反応: CuCNシアン化銅(I) + NaOH水酸化ナトリウム
⟶
NaCNシアン化ナトリウム + CuOH水酸化銅(I)

シアン化銅(I)と水酸化カリウムの反応: CuCNシアン化銅(I) + KOH水酸化カリウム
⟶
KCNシアン化カリウム + CuOH水酸化銅(I)

シアン化銅(I)と水酸化カルシウムの反応: 2CuCNシアン化銅(I) + Ca(OH)₂水酸化カルシウム
⟶
Ca(CN)₂シアン化カルシウム + 2CuOH水酸化銅(I)

陰イオンとの反応

シアン化銅(I)と陰イオンが反応すると，陰イオンが生成します。

シアン化銅(I)とシアン化物イオンの反応: CuCNシアン化銅(I) + CN⁻シアン化物イオン
⟶
[Cu(CN)₂]⁻ジシアニド銅(I)酸イオン

シアン化銅(I)とシアン化物イオンの反応: CuCNシアン化銅(I) + 3CN⁻シアン化物イオン
⟶
[Cu(CN)₄]³⁻テトラシアニド銅(I)酸イオン

シアン化銅(I)とテトラシアニド銅(I)酸イオンの反応: 2CuCNシアン化銅(I) + [Cu(CN)₄]³⁻テトラシアニド銅(I)酸イオン
⟶
3[Cu(CN)₂]⁻ジシアニド銅(I)酸イオン

酸化性化学種との反応

シアン化銅(I)と酸化性化学種が反応すると，種々の生成物が生成します。

シアン化銅(I)と硝酸の反応 ◆ Δ_rG −496.4 kJ/mol K 9.24 × 10⁸⁶ pK −86.97: 2CuCNシアン化銅(I) + 12HNO₃硝酸
⟶
2Cu(NO₃)₂硝酸銅(II) + 10HNO₂亜硝酸 + 2CO₂↑二酸化炭素 + H₂↑水素

シアン化銅(I)と硝酸の反応 ◆ Δ_rG −103.3 kJ/mol K 1.25 × 10¹⁸ pK −18.10: 2CuCNシアン化銅(I) + 10HNO₃硝酸
⟶
2Cu(NO₃)₂硝酸銅(II) + 8HNO₂亜硝酸 + 2CO↑一酸化炭素 + H₂↑水素

還元性化学種との反応

還元性化学種とシアン化銅(I)が反応すると，種々の生成物が生成します。

水素とシアン化銅(I)の反応 ◆ Δ_rG 27.3 kJ/mol K 0.16 × 10⁻⁴ pK 4.78: H₂水素 + 2CuCNシアン化銅(I)
🔥
⟶
2Cu銅 + 2HCNシアン化水素

水素とシアン化銅(I)の反応 ◆ Δ_rG −255.5 kJ/mol K 5.78 × 10⁴⁴ pK −44.76: 3H₂水素 + 2CuCNシアン化銅(I)
⟶
2Cu銅 + 2NH₃アンモニア + 2C炭素

ナトリウムとシアン化銅(I)の反応 ◆ Δ_rG −187.7 kJ/mol K 7.65 × 10³² pK −32.88: Naナトリウム + CuCNシアン化銅(I)
⟶
NaCNシアン化ナトリウム + Cu銅

硫化水素とシアン化銅(I)の反応 ◆ Δ_rG −183.9 kJ/mol K 1.65 × 10³² pK −32.22: 4H₂S硫化水素 + 2CuCNシアン化銅(I)
⟶
3S硫黄 + 2Cu銅 + (NH₄)₂S硫化アンモニウム + 2C炭素

硫化水素とシアン化銅(I)の反応 ◆ Δ_rG −73.9 kJ/mol K 8.85 × 10¹² pK −12.95: 2H₂S硫化水素 + 2CuCNシアン化銅(I)
⟶
2S硫黄 + 2Cu銅 + NH₄CNシアン化アンモニウム + C炭素

加水分解

シアン化銅(I)と水が反応すると，水酸化銅(I)とシアン化水素が生成します。

シアン化銅(I)の加水分解: CuCNシアン化銅(I) + H₂O水
⟶
CuOH水酸化銅(I) + HCNシアン化水素

参考文献

参考文献一覧

1
James G. Speight (2017)
Lange's Handbook of Chemistry, 17th edition
https://www.accessengineeringlibrary.com/content/book/9781259586095
McGraw Hill Education
- Amazon
引用リスト
- ^ 密度, 2.92 g/cm³ - p.42
- ^ 融点, 473 °C - p.42
- ^ 沸点, - p.42
- ^ 蒸発熱, 12 kJ · mol⁻¹ - p.300
- ^ 溶解性, 水に不溶 - p.42
- ^ 溶解性, アンモニア溶液に可溶 - p.42
- ^ 溶解性, シアン化カリウム溶液に可溶 - p.42
- ^ 溶解性, 塩酸と反応 - p.42
2
Janiel J. Reed (1989)
The NBS Tables of Chemical Thermodynamic Properties: Selected Values for Inorganic and C1 and C2 Organic Substances in SI Units
https://doi.org/10.18434/M32124
National Institute of Standards and Technology (NIST)
引用リスト
3
化学物質管理センター
GHS分類結果
https://www.nite.go.jp/chem/ghs/all_fy.html
独立行政法人製品評価技術基盤機構
引用リスト

Δ_rG	−118.5 kJ/mol
K	5.76 × 10²⁰
pK	−20.76

Δ_rG	111.1 kJ/mol
K	0.34 × 10⁻¹⁹
pK	19.46

Δ_rG	−10.9 kJ/mol
K	8.12 × 10¹
pK	−1.91

Δ_rG	−33.7 kJ/mol
K	8.02 × 10⁵
pK	−5.90

シアン化銅(I)

名称

物質名称一覧

化学式と構造

化学式一覧

物質情報

物質情報一覧

構成要素

構成イオン

構成原子

原子の比率

熱力学的性質

相転移特性

標準熱力学特性

溶解度

溶解性

危険有害性

GHSラベル[3]

物理的危険性[3]

健康有害性[3]

環境有害性[3]

製法

酸と塩基の反応

塩基性酸化物と酸の反応

電離反応

化学反応

電離反応

強酸との反応

強塩基との反応

陰イオンとの反応

酸化性化学種との反応

還元性化学種との反応

加水分解

参考文献

参考文献一覧

関連物質

酸

塩基と塩基性酸化物

関連カテゴリ

構成元素による分類

物質の分類

物質の状態

物質の性質

物質の溶解性

物質の色

物質のにおい

GHSラベル^[3]

物理的危険性^[3]

健康有害性^[3]

環境有害性^[3]